
結婚して何年も経つと、外で向かい合って食事をする機会は、案外少なくなります。家では毎日顔を合わせているのに、店のテーブルで正面に座ると、どこか改まってしまう。何を話せばいいのか、少し考える。
そういう二人にこそ、カウンターの鮨をすすめたいと思います。
横に並ぶと、黙っていられる
カウンターでは、二人は同じ方向を向いて座ります。
視線の先にあるのは、相手の顔ではなく、握る手もとです。包丁が入る。シャリが取られる。ひと握りで形になる。見ているだけで時間が過ぎていきます。
向かい合う席での沈黙は、気まずさになりがちです。横に並ぶ席での沈黙は、ただの「一緒に見ている時間」になります。話したくなったら話せばいいし、黙っていてもいい。長く連れ添った二人には、その自由がちょうどいいのです。
同じものを、同じ速さで
おまかせのコースでは、二人に同じ一貫が、同じ間合いで出てきます。
これが意外に大きい。普段の外食では、それぞれが好きなものを頼み、それぞれの速さで食べます。おまかせでは、目の前に同じ握りが並び、ほぼ同時に口へ運ぶ。「いまの、おいしかったね」という言葉が、自然に出てきます。
共通の体験は、会話の材料になります。帰り道にも、翌朝にも、その話ができる。
好みが分かれる魚が出たときも、それはそれで話になります。「これは苦手だったでしょう」「昔は食べられなかったのに」。長い付き合いだからこそ出てくる言葉があります。
節目の日にも、なにもない日にも
結婚記念日や誕生日は、もちろんよい機会です。記念日の過ごし方は記念日のページにまとめています。
けれど、理由のない日に行く鮨も、悪くありません。子どもが独立した、仕事がひと区切りついた、なんとなく二人で出かけたくなった。そんな日に、少しだけ良い店のカウンターに座る。特別な演出がなくても、席そのものが普段とは違う時間をつくってくれます。
予約を入れたその日から、当日までの数日が、少しだけ楽しみになる。それも、外で食事をすることの効用です。
量よりも、ひとつずつを
年齢を重ねると、食事の楽しみ方も変わってきます。たくさん食べたいというより、良いものを少しずつ、ゆっくり味わいたい。
おまかせは、その望みに合った頼み方です。一貫は、ひと口。一皿は、ほんの数口。量に圧倒されることなく、種類の多さを楽しめます。
食が細くなった、という方は、品数を抑えたコースを選ぶ手もあります。全部を食べきれるかどうかを気にしながらでは、せっかくの時間が落ち着きません。無理のない品数で、最後までおいしく。そのほうが、記憶に残ります。
お酒も同じです。それぞれがグラスで頼むのもよいですが、ボトルを一本、二人で分けるのも楽しいものです。同じ瓶から注がれた一杯は、同じ握りと同じように、二人の話の種になります。
二人の夜を、整える
出かける前に、二つだけ確かめておくとよいことがあります。
お互いの苦手なもの。おまかせは内容を店に委ねるので、食べられないものは予約のときに伝えます。長年一緒にいても、相手の苦手を全部は知らないものです。
香り。鮨は、香りを味わう料理です。香水や、香りの強い柔軟剤は控える。これは二人で揃えておきたいところです。細かな点は鮨デートの服装と香りに書きました。
夫婦で営む店で
R-30 hizenは、夫婦二人で営んでいる鮨店です。席はカウンターのみ。30歳以上のお客様だけをお迎えしています。
二人で切り盛りしているため、混み合う時間帯はお料理の提供にお時間をいただくことがあります。急ぐ夜には向きません。そのかわり、急がなくていい夜には、よく合う店だと思います。
席での過ごし方はカウンター寿司のページに、料金はおまかせコースのページに載せています。品数で迷う二人には、三つのコースの選び方が手がかりになります。夫婦二人の席なら、Web予約からもお取りいただけます。