
夏の終わりから、北の海は少しずつ冷えていきます。水温が下がると、魚は冬に備えて脂をためはじめる。十月から十一月は、鮨のネタが目に見えて変わっていく季節です。
北海道で秋に旬を迎える魚を、いくつか挙げてみます。
同じ魚でも、ひと月違えば味は変わります。出はじめの軽やかさ、盛りの充実、終わりぎわの深み。走り、盛り、名残と呼び分けられてきた移ろいです。秋は、その変化がいちばん早く進む季節でもあります。
秋刀魚 脂ののった、秋のはじまり
秋の魚といえば、まず秋刀魚です。夏の終わりから秋にかけて、道東の港に揚がります。
塩焼きの印象が強い魚ですが、鮮度のよいものは握りになります。銀色の皮目に細かく包丁を入れ、生姜や葱を添える。脂が強いので、酢で軽く〆て出されることもあります。光りものらしい香りと、とろりとした脂。日本酒が欲しくなる一貫です。
秋鮭といくら 川へ戻る前の一瞬
九月から十一月にかけて、鮭が生まれた川へ戻ってきます。北海道では「秋味」とも呼ばれます。
この時季の楽しみは、身よりも卵かもしれません。生の筋子が出回るのは、一年のうち秋だけです。膜から一粒ずつほぐし、醤油や出汁に漬けたものが、いくら。漬けたてのいくらは皮がやわらかく、口の中でほどけるように弾けます。時季が進むと皮は少しずつ硬くなるので、秋の早いうちのいくらは格別です。
ししゃも 晩秋の、ごく短い旬
本物のししゃもは、北海道の太平洋側でしか獲れない魚です。漁は十月から十一月の、ひと月ほど。
干して焼くのが一般的ですが、産地に近い土地では、生のししゃもを握りにします。小さな魚を開いて握る、手間のかかる一貫です。淡く上品な白身で、ほのかな甘みがあります。短い旬のあいだだけ出合える、晩秋の味です。
鯖 寒くなるほど、脂が深くなる
鯖は、秋から冬にかけて脂がのります。
握りでは、塩と酢で〆た〆鯖が定番です。〆の加減は店ごとに違い、浅く〆て生に近い食感を残す店もあれば、しっかり〆て旨みを引き出す店もある。昆布を重ねて仕上げることもあります。昆布の働きについては、昆布〆の話に書きました。
鰤 北海道にも、秋の鰤
鰤は冬の魚として知られていますが、北海道では秋に揚がります。
脂ののった身は、薄く引いて握ると甘みが広がります。漬けにしたり、皮目を軽く炙ったりと、仕立ての幅が広い魚です。
秋の握りに、秋の酒
魚に旬があるように、日本酒にも秋の楽しみがあります。
「ひやおろし」と呼ばれるお酒です。冬から春にかけて搾った酒を、夏のあいだ蔵で寝かせ、秋になってから出荷する。ひと夏を越すことで角がとれ、まろやかで落ち着いた味わいになります。
脂ののった秋の魚には、この丸みがよく合います。秋刀魚や鯖の脂を、やわらかく受け止めてくれる。いくらの濃い旨みにも、負けません。
夏のあいだは冷やして飲んでいた方も、秋が深まったら、常温やぬる燗を試してみてください。温度が上がると、米の旨みがふくらみます。握りの温かいシャリとも、温度が近くなります。
旬の魚は、おまかせで
旬は、暦どおりには来ません。その年の水温や潮の具合で、早まったり遅れたりします。だからこそ、その日いちばん良い魚を店が選ぶおまかせは、旬を味わうのに向いた頼み方です。
R-30 hizenのお料理は、おまかせのコースのみ。内容はその日の仕入れで決まるので、ここに挙げた魚が並ぶ日もあれば、そうでない日もあります。おまかせコースの結びには、雲丹・いくら・毛蟹の「三食丼」をご用意しています。
魚にどんな仕事をして握るのかは鮨と料理のページで、コースの中身はおまかせコースのページでご案内しています。秋の酒を合わせたい方は、日本酒とワインのページも。泡を合わせてみたい方は、寿司とシャンパンの相性もどうぞ。